エルニーニョ現象のしくみ
気象予報士試験の学科試験・一般知識・「気候の変動」の項目からエルニーニョ現象について説明します!
エルニーニョ現象って何?
「エルニーニョ現象」ってよく聞く言葉ですね。
でも、どんな原因でどんなことが起きているのか説明できますか?
エルニーニョ現象とはペルー海沖の温度上昇によって、
世界的な気候の変化が起きる現象です。
これと反対に、ペルー海沖の温度が低下することで、
世界的な気候の変化が起きるのはラニーニャ現象といいます。
エルニーニョ現象とラニーニャ現象はどちらも数年に一度のペースで起こります。 世界的に気候が変化し、日本にも影響があるのでとても注目される現象です。
平年を見てみよう
まずは、エルニーニョ現象もラニーニャ現象も起きていない平年時を見てみます。
海の中ではどんなことが起きているのでしょう?
上の地図で囲んだ部分の断面がこちらです。
赤道近くの南東貿易風の影響でこの海上では西→東の風が常に吹いています。
このため海の表面の水も西→東へ移動します。
すると、西側では少なくなった海水を補給しようと海底から冷たい海水が上昇してきます。
これが湧昇流と呼ばれるものです。
一方、南東貿易風は東側の海岸で上昇流となり、ウォーカー循環が発生します。
東側の海岸では上昇気流のため雨が降り、西側の海岸は下降気流で乾燥した気候です。
エルニーニョ現象が起きると…
今度は、エルニーニョ現象が起きたときの断面を見てみましょう。
エルニーニョ現象が起きる時には、西→東の南東貿易風が弱まるため、海水の西→東の移動も不十分です。
すると、海底からの湧昇流も小さく西側の海水面の温度も高いままになります。
一方、大気中のウォーカー循環も機能せず、東側の海岸では干ばつが起き、西側の海岸では集中豪雨や洪水が発生します。
そして、エルニーニョ現象は日本にも冷夏、梅雨の長期化、暖冬などの影響をもたらします。
エルニーニョ現象とは離れた場所にも影響がでることを「テレコネクション」と呼びます。
ラニーニャ現象が起きると…
続いて、ラニーニャ現象が起きたときの断面を見てみましょう。
ラニーニャ現象ではエルニーニョ現象とは反対に、西→東の南東貿易風が平年より強まります。
このため、海水の西→東への移動も平年より活発になり、湧昇流も激しくなります。
すると、東側の海岸の海水温が高く、西側の海岸の海水温が低いという構造がより明確になります。
ウォーカー循環も平年より勢いを増し、東側の海岸では降水が多くなります。
南方振動ってなに?
最近の研究で、エルニーニョ現象やラニーニャ現象が起きるときに、
大西洋中央のタヒチとオーストラリア北部のダーウィンで特徴的な気圧の変化が観測されることが分かりました。
これを「南方振動」と呼びます。
この2地点の気圧の差(南方振動数)から、エルニーニョ現象が起きているのか、ラニーニャ現象が起きているのかを判断することができます。
(南方振動数)=(タヒチの地上気圧)-(ダーウィンの地上気圧)
南方振動数が負の値のときはエルニーニョ現象、正の値の時はラニーニャ現象or平年です。
以上のように、エルニーニョ現象、ラニーニャ現象と南方振動は密接に関連しているので、
この二つを合わせて「ENSO」と呼びます。